収入は十分とは言えない状況
なぜ収入が低いのか
介護職が理想とのギャップを感じるポイントとして、収入の低さがあります。まずは厚生労働省が実施した介護従事者処遇状況等調査(平成29年度)で公開している介護職員の平均給与額を紹介します。全体の平均給与額は293,450円で平均勤続年数は約7.3年です。勤続年数別にみてみると、勤続1年が260,420円、2年が268,150円、3年が275,690円、4年が279,750円、5年~9年が292,150円、10年以上が326,620円です。全体の平均給与を年収で換算すると、293,450円×12ヵ月で3,521,400円となります。日本の全産業の平均年収は約4,400,000円のため、これと比べると介護職の収入が低いことがわかります。
このように介護職の収入が低い要因はいくつか考えられますが、給料アップの弊害としてまず挙げられるのは公定価格の存在です。介護事業者への報酬は介護保険が適用される介護サービスの介護報酬から支給されているため、あらかじめ単価が定められている状況です。報酬額は制度の改定ごとに見直されていますが、その内容については国が行う政策に左右されます。また、介護報酬は1割から3割が利用者の自己負担、残りは保険料と公費の介護保険から支払われます。国民の負担が増えるため大幅な介護報酬の引き上げはそう簡単には起こらないでしょう。事業者に支払われる介護報酬から施設の運営費をはじめとしたもろもろの諸費用を引いた額が給与として職員に支払われます。そのため、介護報酬が上がらない限り大幅な収入アップは難しい状況であると言えます。
これから徐々に改善されていく
では、今後介護職の収入アップは望めないのかと言うと、それは違います。むしろ、介護職の処遇は積極的に改善されていきます。介護職の給料を上げるために、厚生労働省は「介護職員処遇改善加算制度」を制定しました。介護職のキャリアパスを明確にして、職場の環境改善に努める事業所に対しては職員の賃金に反映する加算報酬を支給するという制度です。要件は5区分で定められており、どこに当てはまるかによって加算報酬の額が決まります。最高額の加算Ⅰに当てはまる事業所の場合、職員1人あたり月37,000円ほどが加算されます。
また、勤続10年を超える介護福祉士に対して、少なくとも月80,000円の給料アップをするか、年収4,400,000円以上にするという案も出ています。まだ具体的な内容は確定していませんが、介護福祉士に対する処遇改善が実施されることは確実視されています。また今後、介護職の処遇改善に420億円の公費が充てられることも確定しています。そのため、収入面は改善されていくことでしょう。